相続に必要な戸籍の集め方——「広域交付」で最寄りの役所1か所にまとめられます
公開 2026-07-17
結論から:亡くなった方の「出生から死亡までの戸籍」は、2024年(令和6年)3月に始まった広域交付制度により、本籍地が遠くにあっても、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村窓口で、1か所にまとめて請求できるようになりました。本籍地が転々としている方の戸籍を、かつてのように市区町村ごとに郵送請求して回る必要は、原則なくなっています。
ただし、この制度には「請求できる人」「窓口に本人が行く」「対象外の戸籍がある」という3つの重要な条件があります。順に解説します。
なぜ相続で「出生から死亡まで」の戸籍が必要か
相続の手続き(銀行口座の解約・不動産の相続登記・相続税の申告など)では、相続人が誰かを漏れなく確定するために、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本)一式が求められます。
戸籍は、結婚・転籍(本籍地の変更)・法改正による作り替え(改製)のたびに新しく作られます。このため、亡くなった時点の戸籍だけでは足りず、さかのぼって全部つなげる必要があるのです。転籍が多い方だと、5通・6通と必要になることも珍しくありません。
広域交付とは——2024年3月に始まった新制度
戸籍法の改正により、2024年(令和6年)3月1日から、戸籍証明書の「広域交付」が始まりました。ポイントは2つです。
- どこでも:本籍地が遠くにあっても、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できます
- まとめて:本籍地が複数の市区町村に分かれていても、1か所の窓口でまとめて請求できます
相続のための「出生から死亡までの戸籍集め」は、この制度で大幅に楽になりました。従来のように、昔の本籍地の役所を調べて1通ずつ郵送請求(1通あたり往復1〜2週間)を繰り返す作業が、窓口1回で済む可能性があります。
請求できる人——兄弟姉妹の戸籍は対象外
広域交付で請求できるのは、次の範囲の方の戸籍です。
| 請求できる | 請求できない |
|---|---|
| 本人 | 兄弟姉妹 |
| 配偶者 | おじ・おば、甥・姪など傍系 |
| 直系尊属(父母・祖父母など) | 内縁の配偶者 |
| 直系卑属(子・孫など) |
つまり、親や祖父母(直系尊属)の戸籍は広域交付で取れますが、兄弟姉妹の戸籍は取れません。兄弟姉妹が亡くなった場合の相続(またはきょうだいの戸籍が必要な代襲相続の確認など)では、従来どおり本籍地の市区町村への請求(郵送可)になります。この場合も、司法書士等の専門家は職務上請求で収集を代行できます。
請求の条件——「窓口に本人が行く」が必須
広域交付には、なりすまし防止のため厳格な条件があります。
- 郵送請求・代理人請求はできません。請求する本人が市区町村の窓口に行く必要があります
- 本人確認書類は、顔写真付きのもの(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)が必須です。健康保険証のみでは請求できません
- 取れるのは戸籍全部の証明(謄本)です。一部事項証明書・個人事項証明書(抄本)は広域交付の対象外です
また、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は広域交付の対象外です。とても古い除籍などが該当した場合、その分だけは従来どおり本籍地の市区町村へ請求します(郵送可)。
手数料は従来の戸籍請求と同じで、一般に戸籍謄本450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本750円です(全国共通の標準額)。出生までさかのぼると複数通になるため、数千円程度を見込んでおくと安心です。
なお、窓口ではその場で発行されず、戸籍の量が多いと当日中に交付できない場合や、後日交付になる場合があります。時間に余裕を持って、できれば午前中に行くのがおすすめです。事前に窓口へ電話で「相続のため出生から死亡までの戸籍を広域交付でまとめて請求したい」と伝えておくとスムーズです。
集めたら「法定相続情報一覧図」を作ると、以後が一気に楽になる
戸籍一式が揃ったら、そのまま各手続きに使うこともできますが、法務局で「法定相続情報一覧図」の写しを取得しておくことを強くおすすめします。
- 法務局に戸籍一式と一覧図(家系図のような書式)を提出すると、無料で認証文付きの写しを必要な通数だけ交付してもらえます
- 以後の銀行・証券・不動産登記・相続税申告などで、戸籍の束の代わりに一覧図の写し1枚を出せばよくなります
- 複数の金融機関で同時並行の手続きができるようになります(戸籍の原本は1セットしかないため、一覧図がないと1社ずつ順番待ちになりがちです)
書き方・取得手順は法定相続情報一覧図の作り方で詳しく解説しています。
戸籍集めからの相続手続きの流れ
- 戸籍を集める(本記事・広域交付)
- 相続人を確定する——集めた戸籍で、認知した子・前婚の子などがいないか確認します
- 法定相続情報一覧図を作る(法務局・無料)
- 遺産分割協議——分け方を決めて遺産分割協議書を作成
- 各種の名義変更——銀行口座の解約・払戻し、不動産の相続登記(2024年から義務化・3年以内)など
死亡直後からの手続き全体の順番は死後の手続き全体ガイドをご覧ください。
よくあるつまずき
- 「昔の戸籍が手書きで読めない」——改製原戸籍は毛筆・旧字体のことがあります。窓口で「相続で出生までさかのぼりたい」と伝えると、続きの戸籍がどこにあるか案内してもらえます
- 「どこまでさかのぼればいいか分からない」——提出先(銀行・法務局・税務署)が求めるのは原則「出生から死亡まで」。判断に迷ったら窓口の担当者に一式を見てもらいましょう
- 「平日に役所へ行けない」——広域交付は本人の窓口請求が必須です。どうしても行けない場合は、従来型の郵送請求(本籍地宛て)や、司法書士・行政書士への収集依頼という選択肢があります
死後の手続き全体は、無料ツールで整理できます
戸籍集めは、相続手続きの入口にすぎません。死亡届は7日以内、年金の受給停止は10〜14日以内、相続放棄は3ヶ月、相続税の申告は10ヶ月——期限の違う手続きが同時に押し寄せます。
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出典・参考
※本記事は一般的な制度・手続きの説明であり、個別の法律相談ではありません。手数料・取り扱いは市区町村により運用が異なる場合があります(2026年7月時点の情報)。実際の請求の際は、必ずお住まいの市区町村・法務省の公式情報をご確認ください。
相続の手続きに時間が取れないときは
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