相続登記は自分でできる——義務化の期限(3年・過料10万円)と申請手順をやさしく解説
公開 2026-07-13 / 最終更新 2026-07-21
相続登記(亡くなった方の不動産の名義変更)は、2024年(令和6年)4月1日から義務化されています。期限は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。そして重要なのは、2024年4月より前に相続した未登記の不動産も対象で、こちらは2027年(令和9年)3月31日が期限になるケースが多いこと。手続きは司法書士に頼まなくても自分で申請できます。この記事で手順・書類・費用を整理します。
相続登記の義務化とは——「いつから・いつまで・罰則」
相続登記とは、亡くなった方(被相続人)名義の土地・建物を、相続人の名義に変更する法務局での手続きです。長年「やってもやらなくてもよい」手続きだったため放置が積み重なり、所有者不明土地が全国で社会問題化。その解消のため、不動産登記法が改正されました。
ポイントは次の3つです。
- いつから:2024年(令和6年)4月1日に義務化がスタートしました。
- いつまで:相続の開始(死亡)を知り、かつ、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。遺産分割協議で取得が決まった場合は、協議が成立した日から3年以内に、その内容の登記も必要です。
- 罰則:正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(裁判所が金額を決定します)。なお、いきなり過料になるのではなく、まず法務局から申請を促す催告が届き、それでも応じない場合に手続きが進む運用とされています。
施行前の相続も対象——多くの人の期限は「2027年3月31日」
見落とされがちな最重要ポイントがこれです。義務化は2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。「親が亡くなったのは10年前だから関係ない」とはなりません。
この場合の期限は、「2027年(令和9年)3月31日」と「取得を知った日から3年」のいずれか遅い日です。相続からすでに年月が経っている多くのケースでは、事実上2027年3月31日が締め切りになります。実家の土地や祖父母名義のままの山林など、心当たりがある方は今のうちに動き出すのが安全です。
自分でやる場合の全体の流れ——4ステップ
相続登記は、書類さえそろえば自分で申請できます。流れは大きく4ステップです。
①誰が不動産を引き継ぐかを確定する
まず「誰の名義にするか」を決めます。パターンは主に2つです。
- 遺言書がある場合:遺言の内容に従って取得者が決まります(自筆の遺言は原則、家庭裁判所の検認が必要です。法務局の保管制度を使った遺言は検認不要)。
- 遺言書がない場合:相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が取得するかを決めて遺産分割協議書を作ります。作り方は別記事遺産分割協議書の書き方で詳しく解説しています。
②必要書類を集める
戸籍謄本や住民票の除票など、後述の書類一式を市区町村や法務局で集めます。ここが最も時間のかかる工程ですが、2024年3月から始まった戸籍の広域交付(最寄りの役所でまとめて請求できる制度)で、以前よりかなり楽になりました。
③登記申請書を作成する
法務局の公式サイトに、相続のパターン別(遺産分割協議による場合・法定相続分どおりの場合・遺言による場合など)の申請書様式と記載例が公開されています。自分のケースに合う様式をダウンロードし、不動産の表示(登記事項証明書のとおりに記載)、課税価格、登録免許税額などを埋めていきます。
④法務局に申請する
申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です(自宅の最寄りではない点に注意)。窓口持参のほか郵送でも申請でき、オンライン申請の仕組みもあります。書類に不備があれば法務局から補正(修正)の連絡が来るので、指示に従って直せば大丈夫です。完了すると新しい名義での登記が実現し、「登記識別情報通知」(いわゆる権利証に代わるもの)が交付されます。
必要書類——遺産分割協議で相続する場合の例
もっとも一般的な「遺言なし・遺産分割協議で取得者を決めた」ケースの必要書類です(事案により増減します)。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍(一式)
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(相続人全員が実印を押印)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産を取得する人の住民票
- 固定資産評価証明書(または固定資産税の課税明細書。登録免許税の計算に使います)
- 登記申請書(③で作成したもの)
戸籍の束は「法定相続情報一覧図」で1枚にできる
被相続人の出生から死亡までの戸籍は、量が多くなりがちです。そこで役立つのが、法務局が無料で認証してくれる法定相続情報一覧図。戸籍一式の代わりにこの1枚を提出でき、銀行の相続手続きなど他の場面でも使い回せます。相続登記と同じ法務局で申出できるので、あわせて作っておくのがおすすめです。詳しくは法定相続情報一覧図の書き方をご覧ください。
費用——登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」
自分で相続登記をする場合の費用は、大きく2つです。
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%(1000分の4)。たとえば評価額1,500万円の土地建物なら6万円です。収入印紙で納めるのが一般的です。
- 書類の取得費:戸籍謄本1通450円、除籍・改製原戸籍1通750円、住民票・印鑑証明書・評価証明書が各数百円程度。合計でおよそ数千円が目安です。
つまり、自分でやる場合の実費は「登録免許税+数千円」。司法書士に依頼すると、これに報酬(事案によりますが、およそ数万円〜十数万円が相場とされます)が加わります。
知らないと損する免税措置(2027年3月31日まで)
土地については、次の場合に登録免許税が免税になる措置があります(いずれも2027年(令和9年)3月31日まで)。
- 評価額100万円以下の土地を相続登記する場合
- 数次相続(相続登記をしないまま取得者が亡くなった場合)で、亡くなった方を名義人とする登記をする場合
適用を受けるには、申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」と記載する必要があります(書かないと免税されません)。地方の山林や田畑は評価額100万円以下のことが多く、該当するなら税負担ゼロで登記できます。
3年に間に合わないときは「相続人申告登記」
「遺産分割協議がまとまらない」「相続人が多くて戸籍集めが終わらない」——そんなときのために、義務化とセットで相続人申告登記という簡易な制度が用意されました。
これは、「登記名義人が亡くなったこと」と「自分がその相続人であること」を法務局に申し出る手続きです。申し出をした人は、それだけで相続登記の申請義務を履行したものと扱われます。自分の戸籍など最小限の書類で足り、登録免許税もかかりません。他の相続人の分をまとめて申し出ることもできます(義務を果たしたことになるのは申出をした本人のみ)。
ただし注意点があります。相続人申告登記は名義変更ではありません。不動産を売却したり担保に入れたりするには、結局は正式な相続登記が必要です。また、その後に遺産分割協議が成立して不動産を取得したら、成立日から3年以内に相続登記をする義務が生じます。あくまで「期限に間に合わないときの応急措置」と理解しておきましょう。
自分でやるか、司法書士に頼むか——判断の目安
最後に、自分でやるか専門家に任せるかの判断軸です。
自分でやりやすいケース
- 相続人が配偶者と子どもだけなど、少人数で関係がシンプル
- 遺産分割協議がすでにまとまっている(または遺言がある)
- 不動産が1〜2か所で、平日に役所・法務局とやり取りする時間が取れる
司法書士への依頼を検討したいケース
- 数次相続(祖父母名義のまま)や代襲相続など、相続人の確定が複雑
- 相続人どうしの連絡が取りにくい・関係が難しい
- 不動産が遠方や複数の管轄にまたがる
- 売却の予定があり、期限やスケジュールを確実に守りたい
登記は一度入れると訂正に手間がかかります。少しでも「自分のケースは複雑かもしれない」と感じたら、無理をせず司法書士に相談するのが結果的に安くつくことも多い、というのが実務的な感覚です。
まとめ
- 相続登記は2024年4月1日から義務化。取得を知った日から3年以内に申請、怠ると10万円以下の過料の対象
- 施行前の相続も対象。多くのケースで2027年3月31日が期限
- 手順は「①取得者を決める(遺言/遺産分割協議)→②書類収集→③申請書作成→④不動産所在地の法務局へ申請」の4ステップで、自分でも申請できる
- 費用は登録免許税(評価額×0.4%)+書類実費数千円。評価額100万円以下の土地は2027年3月末まで免税(申請書への条文記載が条件)
- 間に合わないときは相続人申告登記で義務だけ先に果たせる(ただし名義変更ではない)
- 複雑なケースは司法書士へ。個別の判断は専門家に相談を
なお、亡くなった方の手続きは相続登記だけではありません。全体像は母艦記事死後の手続き 全体スケジュールで確認できます。
登記が済んだら——実家を「どうするか」が本番です
名義変更(相続登記)はゴールではなく、スタートです。相続した実家を売る・貸す・畳む(解体)・管理するのどれにするかで、その後の税金もコストも大きく変わります。実家の相続ガイドの4択診断(無料)で、あなたの状況に合う選択肢を中立に整理できます。放置した場合のコストは放置コスト・特定空家リスク診断で試算できます。
死後の手続き全体は、無料ツールで整理できます
相続登記は、亡くなったあとに発生する数十種類の手続きのうちの一つです。死亡届は7日以内、年金の受給停止は10〜14日以内、相続放棄は3か月、相続税申告は10か月——期限の違う手続きが同時に押し寄せます。
モシュットは、いくつかの質問に答えるだけで、あなたに必要な手続きを期限順のチェックリストにする無料ツールです。相続登記の3年の期限も、他の手続きとあわせて一目で確認できます。
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出典・参考
※本記事は一般的な制度・手続きの説明であり、個別の税務・法律相談ではありません。期限・税率・手数料・様式は執筆時点(2026年)の一般的な情報で、個別の状況や制度改正により異なる場合があります。実際の登記申請にあたっては、必ず法務省・法務局の公式情報をご確認のうえ、判断に迷う場合は司法書士等の専門家にご相談ください。
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