法定相続情報一覧図の書き方——戸籍の束が「1枚」になる無料制度をやさしく解説
公開 2026-07-13
法定相続情報一覧図とは、亡くなった方と相続人の関係を1枚にまとめ、法務局(登記所)の登記官が「この内容で間違いない」と認証してくれる公的な証明書です。結論を先にお伝えすると——これがあれば、銀行・法務局・年金などの相続手続きで、分厚い戸籍謄本の束を何度も提出する代わりに、この1枚を出すだけで済みます。作成に必要な戸籍集めは自分で行いますが、一覧図そのものの発行手数料は無料。作り方の流れは「①戸籍を集める → ②一覧図を作る → ③申出書と一緒に法務局へ申出 → ④交付」の4ステップです。この記事で書き方と必要書類を整理します。
法定相続情報一覧図とは何か
法定相続情報一覧図は、2017年(平成29年)5月に始まった「法定相続情報証明制度」にもとづく書類です。
亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の関係を1枚の図にまとめ、それを法務局に提出すると、登記官が戸籍の内容と照らし合わせて認証文を付けた「写し」を交付してくれます。この認証された写しが、法定相続情報一覧図です。
ポイントは、これが戸籍謄本一式の代わりになる公的な証明だということです。相続手続きでは本来、「誰が相続人なのか」を証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍(改製原戸籍や除籍を含む)と相続人全員の戸籍を、手続き先ごとに提出する必要があります。この戸籍の束が、多い場合は10通、20通を超えることも珍しくありません。法定相続情報一覧図は、その分厚い束を「認証済みの1枚」に置き換えられる仕組みです。
なお、一覧図の写しは必要な通数を無料で何枚でも交付してもらえます(申出書に必要通数を記入します)。銀行・証券会社・法務局・年金など、提出先が複数あっても、それぞれに1枚ずつ渡せるということです。
一覧図を使うメリット——手続きが「1枚」で回る
法定相続情報一覧図を使う最大のメリットは、戸籍一式の提出が1枚で済むことです。具体的には次のような場面で役立ちます。
- 銀行・証券会社の相続手続き:預貯金の名義変更や払い戻しの際、戸籍の束の代わりに一覧図の写しを提出できます。金融機関の窓口で戸籍を「原本還付」してもらう手間や待ち時間も減らせます。
- 法務局での相続登記:不動産の名義変更(相続登記)でも、戸籍一式に代えて一覧図の写しを添付できます。2024年4月から相続登記は義務化されており、使う場面が増えています。
- 年金の手続き:遺族年金や未支給年金など、年金関係の手続きでも戸籍の代わりに使える場合があります。
- 相続税の申告:税務署への相続税申告でも、戸籍謄本の代わりに一覧図の写しを添付できます(コピーでの提出が認められています)。
複数の手続きを同時並行で進めるとき、戸籍の束は1セットしかないと、A銀行に出している間はB銀行に出せません。追加で戸籍を取り直せば費用も時間もかかります。一覧図なら必要な数だけ無料で交付されるので、こうした「戸籍の取り合い」が起きません。これが実務上いちばんありがたい点です。
法定相続情報一覧図の書き方(作成手順)
ここからが本題です。一覧図を手に入れるまでの流れは、大きく4ステップです。
①戸籍謄本などの必要書類を集める
まず、一覧図の「元ネタ」になる戸籍を集めます。集めるのは主に次のものです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍(一式)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(または戸籍抄本)
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
この戸籍集めが従来はいちばんの難所でしたが、2024年(令和6年)3月1日から始まった「戸籍の広域交付制度」で大きく楽になりました(後述します)。
②法定相続情報一覧図を作成する
集めた戸籍の内容をもとに、自分で一覧図を作成します。A4サイズの用紙に、次の内容を記載します。
- 被相続人の氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日
- 相続人それぞれの氏名、住所(記載は任意)、生年月日、被相続人との続柄(配偶者・長男・長女など)
- 被相続人と各相続人を線で結んだ関係図
図の形式は、配偶者と子がいる家系図のような形が一般的です。法務局の公式サイトに、家族構成のパターン別(配偶者と子、子のみ、兄弟姉妹が相続人の場合など)の記載例(様式・ひな形)が用意されているので、自分のケースに近いものを選んでExcelやWordで作ると確実です。手書きでも構いません。
なお、一覧図に「法定相続分」(各相続人の取り分の割合)は記載しません。これは後述する「よくある誤解」の代表格です。一覧図はあくまで相続人が誰かを示す図であって、遺産の分け方を示すものではありません。
③申出書と一緒に法務局(登記所)へ申出する
一覧図ができたら、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書(法務局所定の様式)に必要事項を記入し、集めた戸籍・作成した一覧図・本人確認書類を添えて、法務局へ申し出ます。窓口への持参のほか、郵送でも申出できます(郵送の場合は返信用封筒と切手を同封します)。
④一覧図の写しが交付される
登記官が内容を確認し、問題がなければ認証文の付いた一覧図の写しが交付されます。同時に、提出した戸籍謄本などの原本も返してもらえます(原本還付)。交付までの期間は法務局の混雑状況によりますが、おおむね数日〜1週間程度が目安です。交付後の写しは、申出をした翌年から起算して5年間は法務局で保管され、その間は再交付を受けることもできます。
申出に必要な書類
③の申出で提出する書類を、あらためて一覧にします(ケースにより増減します)。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍(一式)
- 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本(または戸籍抄本)
- 申出人(相続人代表者)の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードの表面のコピーなど。原本と相違ない旨を記載し、記名します)
- 法定相続情報一覧図(②で作成したもの)
- 申出書(法務局所定の様式)
一覧図に相続人の住所を記載したい場合は、各相続人の住民票の写しも必要です(住所の記載は任意です)。また、委任状があれば専門家や親族に申出を代理してもらうこともできます。
申出先——どこの法務局に出すか
申出先は、次の4つの登記所(法務局)のいずれかを選べます。
- 被相続人の本籍地を管轄する登記所
- 被相続人の最後の住所地を管轄する登記所
- 申出人(相続人代表)の住所地を管轄する登記所
- 被相続人名義の不動産の所在地を管轄する登記所
つまり、自分の住所地を管轄する法務局でも申出できるため、遠方に住んでいても手続きしやすくなっています。前述のとおり郵送での申出も可能なので、必ずしも窓口へ足を運ぶ必要はありません。管轄する登記所は、法務局の公式サイトの「管轄のご案内」で調べられます。
手数料——一覧図の発行は無料
法定相続情報一覧図の発行手数料は無料です。何通交付してもらっても、一覧図そのものにお金はかかりません。
ただし、作成の前提として集める戸籍謄本などの取得には、市区町村所定の手数料がかかります(戸籍謄本1通450円、除籍・改製原戸籍1通750円が一般的な目安です。金額は変更される場合があります)。「無料」なのは登記官による一覧図の認証・交付部分であって、戸籍集めの実費は別途必要、と理解しておきましょう。
2024年3月〜「戸籍の広域交付」で戸籍集めが楽になった
法定相続情報一覧図を作るうえで最大の難所だった「戸籍集め」は、2024年(令和6年)3月1日施行の戸籍法改正(広域交付制度)で大きく変わりました。
従来は、被相続人の本籍が引っ越しのたびに変わっていると、それぞれの本籍地の市区町村に個別に(郵送などで)請求する必要があり、全国に散らばった戸籍を集めるのに何週間もかかることがありました。
広域交付制度では、本籍地が全国どこにあっても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました。自宅や勤務先の近くの役所1か所で、被相続人の出生から死亡までの戸籍を一括して取れるイメージです。これにより、一覧図作成のための戸籍集めの負担は大きく軽くなりました。
ただし、便利になった一方で次のような制約もあります。
- 請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)に限られます(兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れません)。
- 窓口で顔写真付きの本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)の提示が必要です。
- 郵送や代理人による請求はできません(窓口へ本人が行く必要があります)。
- コンピュータ化されていない一部の古い戸籍は、広域交付の対象外です。
このため、兄弟姉妹が相続人になるケースや、古い戸籍が絡むケースでは、従来どおり本籍地への請求が必要になることもあります。とはいえ、多くの相続では戸籍集めが1か所で完結するようになった意義は大きく、古い解説記事にはこの広域交付が反映されていないことも多いので、最新の制度を前提に進めましょう。
よくある誤解・注意点
「法定相続情報一覧図」と「相続関係説明図」は別物
名前が似ていて混同されやすいのが、相続関係説明図です。これは相続人が自分で作る家系図のようなメモで、登記官の認証はありません。あくまで手続きを分かりやすくするための補助資料で、戸籍一式の代わりにはなりません。一方、法定相続情報一覧図は登記官が認証した公的な証明で、戸籍の束の代わりになります。「認証があるかどうか」が決定的な違いです。
法定相続「分」は記載しない
前述のとおり、一覧図には各相続人の取り分の割合(法定相続分)は記載しません。一覧図は「誰が相続人か」を示すものであって、「いくらもらうか」を示すものではないからです。取り分は遺産分割協議などで別途決めます。
相続放棄をした人・遺産分割の結果は反映されない
一覧図は戸籍の記載から判明する相続人をそのまま図にするものです。そのため、相続放棄をした人や、遺産分割協議の結果として実際には財産を受け取らない人も、氏名が記載されます。「放棄したから載らない」わけではない点に注意してください。相続放棄の事実は、別途、家庭裁判所が発行する書類(相続放棄申述受理証明書など)で示します。
数次相続・代襲相続など複雑なケースは専門家も選択肢
相続が連続して起きている(数次相続)、孫が代わりに相続する(代襲相続)など関係が複雑な場合、一覧図の作成でつまずくことがあります。無理に自作せず、司法書士などの専門家に依頼するのも有効な選択肢です。
まとめ
法定相続情報一覧図は、戸籍の束を「認証済みの1枚」に置き換えられる、無料の公的証明です。要点を整理します。
- 何か:亡くなった方と相続人の関係を1枚にまとめ、登記官が認証した公的な証明書
- 役立つ場面:銀行・法務局(相続登記)・年金・相続税申告で、戸籍一式の代わりに提出できる
- 作り方:①戸籍を集める → ②一覧図を作成 → ③申出書と一緒に法務局へ申出 → ④無料で交付
- 申出先:被相続人の本籍地/最後の住所地/申出人の住所地/不動産所在地の登記所(郵送可)
- 手数料:一覧図の発行は無料(戸籍取得の実費は別途)
- 2024年3月〜:戸籍の広域交付で、戸籍集めが最寄りの役所1か所で済むように
戸籍を何度も出し直すストレスから解放されるだけでも、作る価値のある1枚です。相続手続きの入口として、早めに用意しておくとその後がぐっと楽になります。
死後の手続き全体は、無料ツールで整理できます
法定相続情報一覧図は、亡くなったあとに発生する数十種類の手続きのうちの一つです。死亡届は7日以内、年金の受給停止は10〜14日以内、相続放棄は3か月、相続登記や相続税申告にも期限があり、期限の違う手続きが同時に押し寄せます。
モシュットは、いくつかの質問に答えるだけで、あなたに必要な手続きを期限順のチェックリストにする無料ツールです。相続関係の手続きも、期限とあわせて一目で確認できます。
さらに詳しい実務ガイドは、note有料記事にまとめています。
出典・参考
※本記事は一般的な制度・手続きの説明であり、個別の税務・法律相談ではありません。必要書類・手数料・様式・期限は執筆時点(2026年)の一般的な情報で、地域や個別の状況、制度改正により異なる場合があります。実際の手続きの際は、必ず法務局および各市区町村・各公式窓口の公式情報でご確認ください。
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