公的一次情報にもとづく実務ガイド最終確認 2026-07-24

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遺産分割協議書の書き方——自分で作れる。記載事項・文例の骨子・必要書類をやさしく解説

遺産分割協議書とは、遺言書がない場合に、相続人全員で「誰がどの遺産を受け取るか」を話し合って合意した内容をまとめた書面です。結論を先にお伝えすると——相続人全員の署名と実印の押印、そして全員分の印鑑証明書の添付が基本の形で、銀行での預貯金の払い戻し、不動産の名義変更(相続登記)、相続税の申告などで提出を求められます。決まった様式はなく、パソコンでも手書きでも、自分で作成できます。この記事で、作る前の準備から記載事項、文例の骨子、よくある不備までを整理します。

遺産分割協議書とは何か——どんな場面で使うのか

遺言書がない相続では、亡くなった方(被相続人)の財産は、いったん相続人全員の共有になります。それを「この不動産は長男に、この預金は妻に」と具体的に割り振るのが遺産分割協議で、その合意内容を証拠として書面に残したものが遺産分割協議書です。

「作らなければならない」という法律上の義務はありません。しかし実務では、次のような手続きで提出を求められるため、事実上ほぼ必須の書類です。

  • 預貯金の払い戻し・名義変更:亡くなった方の口座は凍結され、解除には遺産分割協議書(または相続人全員の同意書)の提出が一般的です。口座凍結の仕組みは口座凍結はいつ・なぜ起きるかの記事で解説しています。
  • 不動産の相続登記:法務局での名義変更の添付書類になります。相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象です。詳しくは相続登記の記事をご覧ください。
  • 相続税の申告:配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う場合、遺産分割協議書の写しの添付が必要です。
  • そのほか、自動車の名義変更や株式・証券の相続手続きでも使います。

なお、遺言書があってその通りに分ける場合や、相続人が1人しかいない場合は、原則として遺産分割協議書は不要です。

作成そのものに期限はないが、実質のタイムリミットはある

遺産分割協議書の作成に法律上の期限はありません。ただし、相続税の申告は死亡を知った日の翌日から10か月以内相続登記は不動産の取得を知った日から3年以内という期限があるため、実務上はこれらから逆算して早めに作るのが安全です。

作る前の準備——「相続人の確定」と「財産目録」

いきなり書き始める前に、2つの下ごしらえが必要です。ここを飛ばすと、後述する「協議のやり直し」につながります。

①相続人を確定する(戸籍を集める)

遺産分割協議は相続人全員で行わないと無効です。誰が相続人かは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍をたどって確定します。前の結婚の子や認知した子など、家族も知らなかった相続人が戸籍から見つかることは実際にあります。

集めた戸籍は、法務局で法定相続情報一覧図(戸籍の束の代わりになる無料の公的証明)にしておくと、その後の銀行・登記・税務の手続きがまとめて楽になります。作り方は法定相続情報一覧図の書き方の記事で解説しています。

②財産目録をつくる(遺産をもれなく洗い出す)

何を分けるかが確定しないと協議できません。主な確認資料は次のとおりです。

  • 不動産:登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産税の課税明細書・名寄帳
  • 預貯金:通帳、金融機関発行の残高証明書
  • 有価証券:証券会社の取引残高報告書
  • 負債:借入金の残高証明、督促状など(マイナスの財産も分割協議の対象です)

遺産分割協議書の書き方——記載する内容

決まった様式はありませんが、手続き先(銀行・法務局・税務署)で通る書面にするには、次の要素を押さえます。

  1. 被相続人の特定:氏名・死亡日・最後の本籍・最後の住所(生年月日も書くとより確実)
  2. 相続人全員で協議し合意した旨の一文
  3. 誰が・どの財産を取得するか:財産を特定できる形で記載します。不動産は登記事項証明書の記載どおり(所在・地番・家屋番号など)、預貯金は金融機関名・支店名・預金種別・口座番号まで書きます。
  4. 代償分割をする場合はその旨:「長男が不動産を取得する代わりに、二男へ代償金○○円を支払う」といった取り決めは、協議書に明記しないと贈与とみなされるおそれがあるとされます。
  5. 後日判明した財産の扱い:「本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人○○が取得する(または、別途協議する)」という一条を入れておくと、作り直しを防げます。
  6. 作成日付・相続人全員の署名(自署が望ましい)・実印の押印

作成後は、相続人の人数分を作成して各自1通ずつ保管するのが一般的です。2枚以上になる場合は、ページのつなぎ目に全員の実印で契印を押します。パソコン作成・手書きのどちらでも構いません。

文例の骨子(ひな形)——この形で組み立てる

そのまま流用できる骨子をテキストで示します。財産の表記は必ずご自身の資料(登記事項証明書・通帳)に合わせて書き換えてください。

遺産分割協議書

被相続人 ○○○○(令和○年○月○日死亡)
最後の本籍 ○○県○○市○○町○丁目○番地
最後の住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号

被相続人の遺産について、共同相続人の全員は、
遺産分割協議を行った結果、次のとおり分割する
ことに合意した。

1. 相続人 甲野花子 は、次の不動産を取得する。
   所 在 ○○市○○町○丁目
   地 番 ○番○
   地 目 宅地
   地 積 ○○.○○平方メートル
   (建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積を
    登記事項証明書のとおり記載)

2. 相続人 甲野一郎 は、次の預貯金を取得する。
   ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○

3. 本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産
   は、相続人 甲野花子 が取得する。

以上の協議の成立を証するため、本協議書を○通
作成し、各自署名押印のうえ、各1通を保有する。

令和○年○月○日

住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
相続人 甲野花子 (実印)

住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
相続人 甲野一郎 (実印)

不動産の記載例は、法務局の公式サイト「不動産登記の申請書様式について」にケース別のひな形・記載例が掲載されているので、あわせて確認すると確実です。

よくある不備と注意点——ここで二度手間になる

印鑑証明書の「期限」——登記は期限なし、銀行は期限あり

添付する印鑑証明書について、法務局の相続登記では発行からの期限は定められていません。一方、金融機関は「発行後3か月以内」や「6か月以内」といった期限を設けていることが多いため(期限は各行で異なります)、銀行手続きを先に済ませるか、印鑑証明書は手続き直前に取得するのが安全です。

不動産を「住所」で書いてしまう

日常使っている住居表示(○○町1丁目2番3号)と、登記上の地番・家屋番号は別物です。登記事項証明書のとおりに書かれていないと、法務局で補正を求められることがあります。

訂正の方法——修正テープは不可

書き損じは、訂正箇所に二重線を引き、相続人全員の実印で訂正印を押して直します。修正テープや塗りつぶしは無効と扱われるおそれがあります。大きく間違えた場合は作り直すほうが確実です。なお、欄外にあらかじめ押す「捨印」は訂正が楽になる反面、意図しない書き換えのリスクもあるため、慎重に判断してください。

相続人が1人でも漏れていたら「無効」

協議のあとに戸籍から新たな相続人が見つかった場合、その協議は原則として無効になり、全員でやり直しです。だからこそ、最初の戸籍調査(相続人の確定)が最重要の工程になります。

認印・シャチハタは不可

銀行・法務局とも、印鑑証明書と照合できる実印での押印が前提です。認印やゴム印では手続きが進みません。

専門家に頼んだほうがよいケース

自分で作れる書類ではありますが、次のような場合は無理をせず専門家に相談するのが結果的に早くて安全です。

  • 分け方で揉めている・話し合いがまとまらない:相続人の間に入って交渉できるのは弁護士だけです。まとまらない場合は家庭裁判所の遺産分割調停という選択肢もあります。
  • 行方不明の相続人がいる:家庭裁判所で不在者財産管理人の選任が必要になる場合があります。
  • 未成年の相続人がいる:親も相続人の場合は利益相反となるため、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要です。
  • 認知症などで判断能力に不安のある相続人がいる:成年後見制度の利用を検討する場面です。
  • 不動産が多い・相続登記まで任せたい:司法書士の得意分野です。
  • 相続税の申告が必要:特例の適用判断も含め、税理士に相談を。

これらは個別の事情で結論が変わる領域です。本記事は一般的な説明にとどめますので、該当する方は専門家の判断を仰いでください。

まとめ

遺産分割協議書は、相続人全員の合意を「手続きで通る形」にする1枚です。要点を整理します。

  • 何か:遺言がない場合に、相続人全員で遺産の分け方を合意した書面。預貯金の払い戻し・相続登記・相続税申告で使う
  • 基本の形:相続人全員の署名+実印の押印+全員分の印鑑証明書。様式は自由で自分で作れる
  • 準備:戸籍で相続人を確定(全員参加でないと無効)し、財産目録で遺産を洗い出す
  • 書き方の要:不動産は登記事項証明書のとおり、預貯金は口座番号まで特定。後日判明財産の一条も忘れずに
  • 不備あるある:印鑑証明書の期限(銀行は期限あり)、住所と地番の混同、訂正は全員の実印で
  • 迷ったら:揉めている・行方不明・未成年・認知症がからむケースは専門家へ

作成に期限はありませんが、相続税申告10か月・相続登記3年の期限から逆算して、早めに整えておきましょう。相続手続き全体の流れは死後の手続きまとめの記事で確認できます。


死後の手続き全体は、無料ツールで整理できます

遺産分割協議書の作成は、亡くなったあとに発生する数十種類の手続きのうちの一つです。死亡届は7日以内、年金の受給停止は10〜14日以内、相続放棄は3か月、相続税申告は10か月、相続登記は3年——期限の違う手続きが同時に押し寄せます

なお、遺産のなかに実家・不動産が含まれる場合は、「誰が相続するか」の前に「その家をどうするか(売る・貸す・畳む・管理する)」を整理しておくと協議がまとまりやすくなります。実家の相続ガイドの4択診断(無料)をご活用ください。

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さらに詳しい実務ガイドは、note有料記事にまとめています。


出典・参考

※本記事は一般的な制度・手続きの説明であり、個別の税務・法律相談ではありません。必要書類・期限・様式は執筆時点(2026年)の一般的な情報で、金融機関・法務局・個別の状況により異なる場合があります。実際の手続きの際は、必ず各公式窓口・公式サイトでご確認いただき、判断に迷う場合は弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。

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