墓じまいの流れと費用——総額はおよそ30万〜300万円、6つのステップと離檀料の考え方
公開 2026-07-13
墓じまいとは、いまあるお墓の墓石を撤去して更地に戻し、墓地の使用権を管理者へ返還したうえで、中の遺骨を新しい供養先へ移す(改葬する)ことです。結論を先にお伝えすると——費用の総額はおよそ30万〜300万円。幅が大きいのは、墓石撤去の実費に加えて「新しい納骨先を何にするか」で金額が大きく変わるためです。必要な行政手続きは、お墓のある市区町村での改葬許可申請の1本。改葬は2023年度に166,886件と過去最多になっており、いまや特別な選択ではありません。この記事で流れと費用の内訳を整理します。
墓じまいとは何か——年16万件超、もう特別な選択ではない
墓じまいは、法律上は「改葬」(遺骨を別のお墓や納骨堂などへ移すこと)にあたります。墓地や遺骨の扱いは「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)で定められており、遺骨を勝手に移すことはできず、市区町村長の改葬許可が必要です。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、改葬の件数は2023年度(令和5年度)に166,886件と過去最多を更新しました。2011年度は約7.7万件でしたから、12年ほどで約2.2倍に増えた計算です。
背景にあるのは、次のような事情です。
- 継ぐ人がいない:少子化・未婚化で、お墓を守る次の世代がいない
- 遠すぎる:進学や就職で故郷を離れ、お参りのたびに帰省の負担がかかる
- 維持費の負担:年間管理料や法要のたびの出費が、使わないお墓に対して重い
つまり墓じまいは「先祖を粗末にする行為」ではなく、お参りできない状態を解消し、手を合わせられる場所に遺骨を移し直す前向きな整理です。この視点は、後述する親族への切り出し方でも重要になります。
墓じまいの全体の流れ——6つのステップ
墓じまいは、おおむね次の6ステップで進みます。全体で数か月〜半年程度かかるのが一般的です。
①親族の合意をとる
最初にやるべきことは、書類集めではなく親族への相談です。お墓は祭祀財産といって、名義人(祭祀承継者)が単独で処分を決められるのが法律上の建前ですが、実際には「聞いていない」という一点で親族間のしこりになりがちです。兄弟姉妹、おじ・おば、そのお墓にお参りしている親戚には、必ず事前に話を通しましょう。
②新しい納骨先を決める
改葬許可申請には、遺骨の行き先が決まっていることが前提になります(申請書に改葬先を記載し、多くの自治体で受入証明書などの提出を求められます)。永代供養墓・納骨堂・樹木葬・散骨・手元供養など選択肢は後述しますが、「出す」より先に「入れる先」を決める、が鉄則です。
③いまのお墓の管理者(寺・霊園)に相談する
菩提寺の場合はご住職に、公営・民営霊園の場合は管理事務所に、墓じまいの意向を伝えます。ここで埋葬(埋蔵)証明書を発行してもらう必要があるため、管理者との関係を壊さないことが実務上とても大切です(切り出し方は後述)。
④改葬許可申請をする
いまのお墓がある市区町村の役所に「改葬許可申請書」を提出し、改葬許可証の交付を受けます。必要書類は一般に、改葬許可申請書・埋葬証明書・受入証明書(改葬先の書類)などで、自治体により様式や添付書類が異なります。申請の書き方・必要書類・つまずきやすい点は、改葬許可申請の詳しい手順で別途解説しています。
⑤閉眼供養(魂抜き)をする
仏式の場合、墓石から遺骨を取り出す前に、僧侶に読経してもらう閉眼供養(魂抜き・お性根抜き)を行うのが一般的です。宗教的な儀式であり法律上の義務ではありませんが、お寺との関係や親族の心情を考えると、省略しない方が円満に進むケースが多いでしょう。
⑥墓石を撤去し、使用権を返還する
石材店に依頼して墓石を解体・撤去し、区画を更地に戻して管理者へ返還します。寺院墓地では石材店が指定されている(指定石材店制度)ことがあるため、勝手に相見積もりを取る前に管理者へ確認しましょう。取り出した遺骨は、改葬許可証とともに新しい納骨先へ納めて完了です。
墓じまいの費用内訳——どこにいくらかかるか
総額およそ30万〜300万円の内訳を分解します。大きくは「①いまのお墓を閉じる費用」と「②新しい納骨先の費用」の2階建てです。
墓石の撤去・処分費:1㎡あたりおよそ10万〜15万円が目安
墓じまい費用の土台になるのが墓石の解体・撤去工事です。相場は1㎡あたりおよそ10万〜15万円とされ、一般的な2〜3㎡のお墓ならおよそ20万〜50万円が目安です。ただし、重機が入れない山の上の墓地、階段しかない立地、隣の墓との間隔が狭い場合などは手作業が増え、割高になります。必ず現地を見たうえでの見積もりを取りましょう。
閉眼供養のお布施:およそ3万〜10万円
閉眼供養のお布施はおよそ3万〜10万円が目安とされます。お布施は定価のあるものではないので、迷ったら「皆さまどのくらい包まれていますか」とお寺に率直に聞いて差し支えありません。
離檀料:法的義務ではない——目安と高額請求への備え
菩提寺のお墓を閉じてお寺との関係を終える(離檀する)際、感謝の気持ちとして包むお金が離檀料です。ここは誤解とトラブルが多いので、事実を分けて整理します。
- 離檀料は法律で定められた支払い義務ではなく、あくまで慣習とされています
- 包む場合の目安はおよそ3万〜20万円(通常の法要のお布施の2〜3倍程度)とする解説が一般的です
- 一方で、数百万円といった高額な離檀料を求められたという相談例も報じられています
高額な請求を受けて困ったときは、その場で応じず、消費生活センター(消費者ホットライン188)や弁護士などの第三者に相談してください。ただし後述のとおり、こうしたトラブルの多くは金額そのものより「切り出し方の手順」でこじれています。
行政手続き・書類の実費:数百円〜数千円程度
改葬許可申請の手数料は無料〜数百円程度の自治体が多く、証明書類の発行手数料を含めても数千円程度に収まるのが一般的です。費用全体から見れば小さい項目ですが、書類の不備は日程全体を遅らせるので、段取り上は重要です。
新しい納骨先の費用帯——総額を左右する最大の変数
総額が30万円にも300万円にもなる理由が、この項目です。代表的な選択肢と費用帯の目安を挙げます(いずれも「およそ」の幅で、地域・施設により異なります)。
- 永代供養墓(合祀型):およそ5万〜30万円。他の方の遺骨と一緒に埋葬され、管理は施設側が担う。最も費用を抑えやすい
- 納骨堂:およそ20万〜150万円。屋内型でお参りしやすいが、都市部の自動搬送式などは高め
- 樹木葬:およそ20万〜80万円(合祀タイプならおよそ5万円台から)。樹木や草花を墓標とする形式
- 散骨(海洋散骨など):およそ5万〜30万円。委託散骨なら数万円台から。ただし遺骨を残さない選択なので、親族の合意はより慎重に
- 一般墓を建て直す(引っ越し):およそ100万〜250万円以上。墓石を新調するため最も高額
「墓じまい=お金がかかる」と身構える方は多いのですが、合祀型の永代供養を選べば、撤去費と合わせて総額およそ30万〜80万円程度に収まるケースも十分あります。逆に、新しく一般墓を建てるなら総額300万円近くになることもある——この構造を押さえておくと、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
親族と寺への切り出し方——トラブルの大半はお金でなく「手順」
墓じまいのトラブルというと離檀料の金額が注目されがちですが、実際にこじれる原因の多くは、「決めてから伝えた」という手順の問題です。相手が親族でもお寺でも、構図は同じです。
親族には「相談」の形で、結論の前に
「墓じまいすることにしたから」と事後報告すると、内容に賛成の親族でも感情的に反発しやすくなります。「お墓のことで困っていて、相談したい」という入り口で、①お参りできていない現状、②管理料などの負担、③遺骨を放置しないための移し先の案、の順で話すと、「先祖を捨てる話」ではなく「先祖のための引っ越しの話」として伝わります。費用の分担についても、この段階で話しておくと後が楽です。なお、墓じまいが実家の売却や片づけとセットになる場合は、遺品整理・実家の片づけの進め方も併せてご覧ください。
お寺には「撤去の通告」ではなく「これまでの感謝と事情の相談」から
お寺にとって檀家の減少は経営に直結する問題であり、突然「墓を撤去します、証明書をください」と切り出せば、態度が硬くなるのも無理はありません。最初の一言は「これまでお世話になったお礼」と「継げない事情の説明」にして、住職に相談する形をとりましょう。多くのお寺は事情を理解してくれますし、境内の永代供養墓など「お寺との縁を残す移し先」を提案してもらえることもあります。書類の話や石材店の話は、意向が共有できてからで十分です。
自分でやれる部分と、業者に頼む部分
「墓じまいを自分でやれば安くなるのか」はよく聞かれる論点です。結論は、手続きと調整は自分でできるが、工事はできないです。
自分でできること
- 親族の合意形成、お寺・霊園との交渉
- 新しい納骨先の見学・契約
- 改葬許可申請などの役所手続き(平日に動ける必要はあります)
- 遺骨の運搬(法律上、自家用車などで自分で運ぶことは可能です)
業者(専門家)に頼むこと
- 墓石の解体・撤去工事:石材店の仕事です。基礎まで解体して更地に戻す工事は個人ではできません
- 閉眼供養:僧侶に依頼します
- (任意)代行サービス:役所手続きや調整を含めて一括代行する業者もあり、代行手数料の相場はおよそ数万〜十数万円。遠方で動けない場合の選択肢です
つまり「墓じまいを自分で」の実態は、工事以外の段取りを自分で回して代行費用を節約することです。時間はかかりますが、手順どおりに進めれば特別な資格は要りません。逆に、現地が遠方・平日に動けない・関係者が多い、という場合は代行の利用が現実的です。
まとめ
- 墓じまい=墓石を撤去して使用権を返還し、遺骨を新しい供養先へ移す(改葬する)こと。改葬は2023年度166,886件と過去最多
- 流れは6ステップ:①親族の合意 → ②新しい納骨先を決める → ③寺・霊園に相談 → ④改葬許可申請 → ⑤閉眼供養 → ⑥墓石撤去・返還
- 費用はおよそ30万〜300万円。撤去工事は1㎡あたりおよそ10万〜15万円、閉眼供養およそ3万〜10万円、離檀料は法的義務ではなくおよそ3万〜20万円が目安
- 総額を決めるのは新しい納骨先。合祀型永代供養なら総額を大きく抑えられる
- トラブルの大半は手順。親族にもお寺にも「決定の通告」ではなく「相談」から入る
- 手続き・調整は自分でできる。工事は石材店、供養は僧侶に依頼する
行政手続きの中心となる改葬許可申請の書き方は、こちらの記事で詳しく解説しています。また、墓じまいが親の死後の手続きの一環である場合は、死後の手続き全体の流れから全体像を押さえるのがおすすめです。
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墓じまい・改葬は、亡くなったあとに発生する数十種類の手続きのひとつです。死亡届は7日以内、年金の受給停止は10〜14日以内、相続放棄は3か月——期限の違う手続きが同時に押し寄せるなかで、お墓の判断は後回しになりがちです。
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出典・参考
※本記事は一般的な制度・手続きの説明であり、個別の法律・税務相談ではありません。費用・相場は執筆時点(2026年)の一般的な目安で、地域・墓地の立地・施設・お寺との関係により大きく異なる場合があります。改葬許可申請の様式・必要書類は市区町村ごとに異なるため、実際の手続きの際は必ずお墓のある市区町村および各施設の公式情報でご確認ください。
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