公的一次情報にもとづく実務ガイド最終確認 2026-07-24

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エンディングノートの書き方——挫折しない「最小構成5項目」から始める

エンディングノートに遺言書のような法的効力はありません。しかし、口座や保険の所在、契約、連絡先を書き残しておくだけで、残された家族の実務負担は大きく減ります。結論を先にお伝えすると——分厚い市販ノートを1ページ目から埋めようとするのが挫折のもとです。死後の手続きに本当に効く5項目(①財産の所在 ②契約とサブスク ③デジタル資産の手がかり ④連絡先リスト ⑤医療・葬儀の希望)だけの「最小構成」から始めるのが正解です。この記事で、書く順番と注意点を整理します。

エンディングノートとは——遺言書との違いは「法的効力」

エンディングノートとは、自分に万一のことがあったとき、家族に伝えたい情報や希望を書き残しておくノートです。財産の所在、契約しているサービス、知らせてほしい人の連絡先、医療や葬儀の希望——内容も形式も自由で、市販のノートでも、ふつうの大学ノートでも、パソコンのファイルでも構いません。

よく混同されるのが遺言書との違いです。決定的な差は、法的効力があるかどうかにあります。

  • 遺言書:「誰にどの財産を相続させるか」を法的に決める書類。民法で方式(自筆証書遺言・公正証書遺言など)が厳格に定められており、方式を満たせば法的な効力を持ちます。
  • エンディングノート:形式自由の「情報と希望の伝言」。法的効力はありません。エンディングノートに「長男に家を相続させる」と書いても、遺言としての効力は生じません。

「効力がないなら意味がないのでは」と思うかもしれませんが、役割が違うのです。遺言書は財産の分け方を決めるもの、エンディングノートは家族が手続きを進めるための情報を渡すものです。実際に家族が亡くなった直後に困るのは、「遺産をどう分けるか」より先に、「どこの銀行に口座があるのか分からない」「どの保険に入っていたのか分からない」という情報の欠落です。ここを埋めるのがエンディングノートの仕事で、遺言書とは補い合う関係にあります。財産の分け方に希望があるなら、エンディングノートとは別に遺言書の作成を検討してください。

なぜ8割が知っているのに、書き上げる人は一握りなのか

エンディングノートの知名度は高く、楽天インサイトの「終活に関する調査」では認知は8割を超えるという結果が出ています。ところが、一般社団法人終活協議会の調査では、9割が必要性を感じている一方で実際に「書いている」人は1割未満。さらに古い調査ですが、相続診断協会の発表では書いている人はわずか2%程度という結果もあります。数字は調査により幅がありますが、「知っているのに書けていない」人が圧倒的多数——という構図は共通しています。

なぜ、これほど挫折するのでしょうか。理由ははっきりしています。

  • 市販のエンディングノートが分厚すぎる:自分史、思い出、家族へのメッセージ、趣味の記録……数十ページの記入欄がある製品が主流です。1ページ目の「自分の生い立ち」で手が止まり、そのまま本棚へ、が典型的な挫折パターンです。
  • 「気持ちの整理」から始まる構成:気持ちや想いは、書くのにいちばんエネルギーが要る項目です。それが冒頭に来ていると、着手のハードルが跳ね上がります。
  • 完璧に書こうとする:「全部埋めてから家族に見せよう」と考えると、永遠に完成しません。

視点を変えましょう。家族が実務で困るのは「気持ちが書かれていないこと」ではなく、「情報がないこと」です。思い出やメッセージは、あとから何度でも書き足せます。まず情報だけ——それも死後の手続きに効く順に——書くのが、挫折しない唯一の方法です。

挫折しない最小構成——死後の実務に効く順に5項目

ここからが本題です。次の5項目を、この順番で書いてください。全部書けなくても、①だけでも家族の負担は大きく変わります。

①財産の所在(口座・保険・不動産の一覧)

最優先はこれです。「どこに何があるか」の一覧を作ります。

  • 預貯金:銀行名・支店名・口座の種類(普通・定期)。残高を書く必要はありません。「ある」と分かれば家族は手続きできます。
  • 保険:保険会社名・保険の種類(生命保険・医療保険など)・証券番号か証券の保管場所。生命保険は請求しなければ支払われません——家族が存在を知らない保険は、ないのと同じです。
  • 不動産:所在地(住所)と、権利証・登記識別情報の保管場所。
  • 有価証券・その他:証券会社名、貸金庫の有無など。

重要な注意:ここに暗証番号・パスワードは絶対に書かないでください(理由は後述します)。書くのは「どこにあるか」だけです。

②契約とサブスク

見落とされがちですが、実務では地味に効きます。亡くなった後も、契約は自動では止まりません。電気・ガス・水道・携帯電話・インターネット回線・クレジットカード・新聞、そして動画配信やアプリのサブスクリプション——解約されない限り引き落としが続きます。契約先の名前と、できれば引き落とし口座を一覧にしておくと、家族は上から順に解約するだけで済みます。

③デジタル資産の手がかり

現代のエンディングノートでいちばん重要度が上がっている項目です。ネット銀行・ネット証券・スマホ決済・ポイント・暗号資産は、通帳も郵便物もないため、家族はその存在に気づくことすらできません。「◯◯銀行(ネット銀行)に口座あり」「◯◯証券を使っている」と、サービス名だけでも書き残してください。手がかりさえあれば、家族は各社の相続手続き窓口にたどり着けます。

なお、金融機関は名義人の死亡を知ると口座を凍結します。ネット銀行も例外ではありません。凍結の仕組みと解除の流れは「口座凍結はいつ・どうなる?」の記事で詳しく解説しています。

スマホ自体のロック解除も難所です。パスワードそのものをノートに書くのは避け、「解除の手がかりを封筒に入れて別の場所に保管し、その場所だけをノートに書く」といった二段構えが現実的です。

④連絡先リスト

亡くなった直後、家族は「誰に知らせればいいのか」で立ち往生します。訃報を知らせてほしい友人・知人(氏名と電話番号)、勤務先や所属団体、そしてかかりつけ医・付き合いのある税理士や司法書士がいればその連絡先。家族が知らない交友関係ほど、書き残す価値があります。

⑤医療・葬儀の希望

最後に希望です。延命治療を望むか葬儀の規模(家族葬でよいか・呼んでほしい人)菩提寺や希望する葬儀社があるか遺影に使ってほしい写真の場所。ここは「決めきれないなら空欄でよい」項目です。ただ、一言でも書いてあれば、家族は「本人の希望どおりにできた」という納得を得られます。これは残された側の心の負担を大きく軽くします。

——以上の5項目で、エンディングノートの実務的な役割はほぼ果たせます。思い出や家族へのメッセージは、この5項目が書き終わってから、余力で書き足せば十分です。

なお、この5項目をそのまま書き込める記入式ワークシートPDF「もしもの時ファイル」を、モシュットのnote実務ガイドの購入者特典としてご用意しています。項目を考える手間なく、埋めるだけで最小構成が完成します。

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書くときの注意点——防犯・保管・更新

暗証番号・パスワードは書かない

繰り返しますが、キャッシュカードの暗証番号やネットバンキングのパスワードをノートに書いてはいけません。エンディングノートは金庫に入れて封印するものではなく、家族が見つけられる場所に置くものです。盗難や紛失の際、口座情報と暗証番号がセットで流出すれば被害は甚大です。また、家族が暗証番号を使って死後に預金を引き出す行為は、後の相続トラブルの火種にもなります。書くのは「どこに・何があるか」まで。実際の手続きは、家族が金融機関の正規の相続手続きで行えば、暗証番号がなくても進められます。

保管場所と「伝え方」——書いても伝わらなければゼロ

書き上げたノートが発見されなければ、書かなかったのと同じです。かといって、誰でも目にする場所に置くのは防犯上よくありません。おすすめは、自宅の分かりやすい引き出しなどに保管し、「エンディングノートを書いた。◯◯にある」と信頼できる家族に口頭で伝えておくことです。中身を見せる必要はありません。存在と場所だけ共有しておけば十分です。

年1回、決めた日に見直す

口座もサブスクも保険も、数年で変わります。古い情報のノートは、かえって家族を混乱させることもあります。誕生日、年末年始、お盆など「決めた日」に年1回見直す習慣にしてください。書き直すたびに日付を入れておくと、家族はどれが最新か判断できます。

親に書いてもらうときの切り出し方

この記事を読んでいる方の多くは、「自分が書く」だけでなく「親に書いてほしい」と考えているのではないでしょうか。ただ、正面から「エンディングノートを書いて」と頼むと、「縁起でもない」と身構えられがちです。切り出し方のコツを挙げます。

  • 「死んだら」ではなく「入院したら」を入口にする:「もし入院したとき、どの保険に入ってるか分からないと請求できないから、一覧だけ教えて」——死を前提にせず、生きている間の実務から入ると抵抗感が大きく下がります。
  • 自分が先に書いて見せる:「自分も書いたから」と現物を見せるのがいちばん強力です。若い世代が書いていれば、「終活=死の準備」ではなく「家族への実務の引き継ぎ」だと伝わります。
  • 全部ではなく1項目だけ頼む:「口座の一覧だけ」「保険の一覧だけ」とスモールスタートで。1項目書けば、続きは案外進むものです。
  • 家族が集まる機会を使う:お盆や年末年始など、家族がそろって時間のあるときが適しています。その場で一緒に書くのもよい方法です。

まとめ

  • エンディングノートに法的効力はない。財産の分け方を決めたいなら遺言書。ノートの役割は家族が手続きに使う情報を渡すこと
  • 認知は8割超なのに、書いている人は1割前後・2%という調査もある。挫折の原因は分厚い市販ノートを全部埋めようとすること
  • 最小構成は①財産の所在 ②契約とサブスク ③デジタル資産の手がかり ④連絡先リスト ⑤医療・葬儀の希望の5項目。①だけでも価値がある
  • 暗証番号・パスワードは書かない。保管場所は家族に「存在と場所だけ」伝え、年1回見直す
  • 親に頼むときは「死んだら」ではなく「入院したら困るから」と、実務を入口にする

エンディングノートは「人生の総まとめ」ではなく、家族への実務の引き継ぎ書です。5項目だけなら、今日、30分で下書きができます。完璧を目指さず、まず1項目から始めてください。


死後の手続き全体は、無料ツールで整理できます

エンディングノートに書き残した情報を、実際に使うのは残された家族です。死亡届は7日以内、年金の受給停止は10〜14日以内、相続放棄は3か月——死後の手続きは数十種類にのぼり、期限の違う手続きが同時に押し寄せます。全体像は死後の手続き一覧の記事にまとめています。

モシュットは、いくつかの質問に答えるだけで、必要な手続きを期限順のチェックリストにする無料ツールです。エンディングノートを書く前に、「家族が何をすることになるのか」を一度見ておくと、何を書き残すべきかが具体的に見えてきます。

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さらに詳しい実務ガイドはnote記事にまとめています。購入者特典として、この記事の最小構成5項目をそのまま書き込める記入式ワークシートPDF「もしもの時ファイル」が付属します。

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出典・参考

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法律相談ではありません。遺言書の方式・効力など法律に関わる事項は、執筆時点(2026年)の一般的な情報にもとづいており、個別の状況により異なる場合があります。実際の判断の際は、必ず公証役場・法務局・弁護士など各公式窓口・専門家にご確認ください。統計数値は各調査時点のものであり、調査により結果に幅があります。